李 これはたぶん文化の違いの問題ではないかと思います。河童が半島から来たものだというお話がありましたが、日本でそのようにたくさんの種類が生まれたのは、日本が海洋国で様々な文化が流入するからではないかと思います。しかも2、3千の河童が存在し続けることができるというのも、日本が「神の国」だからだと思います。私が読んだ日本の歴史の本には、日本には八百万の神様がいるというふうに書いてありました。
それに比べて、韓国人は宗教にはすごく厳しい民族です。仏教であれキリスト教であれ地球であれ、何か一つを信じるとそれ以外を認めることはできないという宗教精神です。それに比べて、日本人は宗教にすごく柔軟性をもっていまして、クリスチャンでないのに結婚式を教会であげたり、人が亡くなったときは仏教式で行われたり、神社に参拝しながら家には仏壇をもっている。韓国人には絶対通用できない宗教的な見解です。そんな韓国ですから河童が100種類も生まれるようなことはありません。このことは日本と韓国の一番大きな差異ではないかと思います。鬼については、韓国ではあくまでもユーモアの世界で存在するようなものであって、信じたりするような対象ではありません。オーソドックスな韓国人はその程度に考えています。
日下 鬼をマンガ化する漫画家はいますか。
李 韓国では、鬼とかを主人公に扱うというのは、あまり受けないです。マンガに対する自由とか考え方が日本と違うということの一例であります。
日下 鬼を描かない一つの理由として、韓国のマンガ家の方たちが日本のマンガの模倣から入って、まだ完全にはそこから抜け出ていないということがあるのではないでしょうか。実は、日本も戦争に負けたあと、自分に自信がないものですから、日本らしいことをマンガにする度胸がなかったんです。だからどこか白人のような美男美女を描いていたんですけれども、私が思うに、それを変えたのは松本零士です。