日下 お二人の先生、本当にありがとうございました。自分が好きだったものが、遠くの人達にも好かれているというお話は本当に気持ち良いものですね。遺伝子に似ているのかもしれませんが、自分と共通な気持ちの人が増えるというのは嬉しいことであります。これは、日本の得になるとあまり言いたくないのですが、実際得にはなるんですよね。
この間、イギリスのエコノミストという雑誌の7月22日号が日本がこれで得をするということに嫉妬したようなことを書いていまして、それが呉さんのお話とよく似ていました。呉さんに取材にきたのではないですか。そっくりのことが書いてありました。
考えてみれば、ギリシャは国境の外にギリシャ精神圏をもっていた。あるいは、ギリシャ文化圏というのは国境の外にあったわけです。これでギリシャは大変得をしたし、感化された人もそれを喜んでいた。それからローマもそうです。ヨーロッパ各地の人は、ローマの影響を受けているということを、山奥の人まで自慢したんですよね。それに似たようなことが現在の日本、アジアでどうやら起きているらしい。一つの大きな発見です。自分たちでさえ、日本のすることにそんな普遍性はないだろう、安くて故障しないぐらいが取り柄だろうと考えていまして、日本精神が世界に受け入れられるということを、戦争に負けてからずっと諦めていたんです。それがこのマンガ・アニメの世界ではそうではない。こちらから何も言わなくても若い人がそんなに喜んで受け取ってくれているわけです。率直な感想としては、いったい我々は何をしたんだろうか。そんないいことをしたのかな、という感じがします。そんないいものが心や身体に備わっていたのだろうかというのが、第一の感想であります。
先日あるレポートに書いたのですが、世界を分類する方法の一つとして大陸と島国という分け方があります。大陸と島国では何から何まで根本から違っている。我々日本人の考え方、心、生活、家族関係、あるいは国家観というのは島国の人にはすぐわかってもらえる。今日のお話を聞きますと、いまはそれがアジアの人々に伝わっているんじゃないかと思いました。
先ほど李先生が、韓国はアメリカと日本に挟まれながらやがて独自のマンガ・アニメをつくるであろう、つくりたいものである。