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日本のマンガとアニメは、アメリカの作品にとってかわって、アジアでナンバーワンの座を誇っています。日本のマンガとアニメから翻訳されていない主なアジアの言語は一つもないと言っても過言ではありません。

戦後、日本のマンガとアニメが本格的にシンガポールにきたのは80年代以降のことでした。それには二つの形があって、一つは日本マンガの中国語海賊版の輸入、もう一つは地元のテレビ局の日本アニメ放送だと考えられます。80年代のアジアは海賊版天国だったといえます。台湾、香港、マレーシアなど各地の日本マンガの中国語版はすべてが海賊版でした。それらの海賊版がたくさんシンガポールに入ってきて、日本マンガ読者の第一世代を育ててました。80年代の日本マンガの海賊版の品質は大変悪く、一部のものはトイレットペーパー版とよばれ、読んですぐ捨ててもよいような粗悪なものでした。しかし、海賊版の値段は大変安く、「鉄腕アトム」「キャンディキャンディ」「ジャングル大帝」「ブラックジャック」「リボンの騎士」のような名作をアジア各地の華人社会に紹介しました。

80年代の海賊版は、台湾からきたものがほとんどです。それでは80年代の二つの海賊版の例を挙げてみましょう。

(資料を紹介しながら)これは、手塚治虫の「ブラックジャック」です。ご覧のように、タイトルは「怪しい医者・ハタ博士」に変わりました。本の大きさはポケットサイズになって、紙の質もあまりよくありませんでした。しかし、台湾版はほかの海賊版よりもよいほうです。

次は「ドラえもん」です。これも勝手に変な名前に変わっています。アジアの華人は、ドラえもんのことを「オ・シャウディンダン」と呼んでいます。シャウディンダンとは中国語で小さな鈴の意味です。ドラえもんはいつも首に鈴をつけているからです。ドラえもんは、80年代以降、アジアでもっとも愛されていて翻訳数も番多い日本マンガだと思います。

一方、80年代になって、地元のテレビ局がたくさんの日本アニメを放送しました。そのなかで人気を集めたのは、「キャンディキャンディ」「ジャングル大帝」「鉄腕アトム」「マクロス」などです。アニメのおかげでこれらのマンガ本もよく売れました。それでは、二つの日本のアニメを紹介します。

 

 

 

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