竹内 通常日本の劇場アニメというのは、つくるのに最低でも2億円ぐらいかかります。本当にちゃんとしたものをつくるといったら、やはり5億とか6億ぐらいかかるものです。田中さんの説明によると、この作品はとにかく地味な作品。派手なシーンもなければキャラクターもかわいくない。実はキャラクターがパッと見てかわいくないというのはアニメにとって致命的で、マーチャンダイジングの展開ができないので、その収益が見込めないんですよ。なぜそのような作品をつくりたいのかというのがずっと疑問で、田中さんが一言僕に言っていたのは、私はこういうアニメーションは働く女性に見せたいんだと言うんですね。このあいだ出来上がり直後の試写を見てジーンとさせられたんです。アニメーションなどの仕事をしていて自分が忘れていたもの、それはキャラクターがかわいいとか、すごいCGを使っているとか、そういうことではなくて、実写でも、もしかしたらパラパラ絵物語でも人をうつ感動があるということを考えさせてくれました。いま自分自信も含めて、日本のアニメのなかで忘れられているものを、確認させてくれた作品です。
本当だったら、田中さん、いま十数億というプロジェットを一緒にやっていますが、それと並行して8年の歳月をかけて、本当に少ない人数でやっていた作品のようです。こういうことをやっているということを、もっともっとこの機会に皆さんに知っていただき、是非この作品を見る機会があったら見てください。好きか嫌いかは個々が感じることです。それ以上は言いません。ただ、アニメーションの可能性、ビジネス的なものとかいろいろな可能性を広げてくれると思います。
最後に、私のほうも、結局私ができることというのは、きれいごとを言うかもしれませんが、私も会社が大きくなってゆく過程で、コンテンツを買い取りたいとか、漫画作家さんを独占契約したいなどという乱暴な話しが来たこともあります。