竹内 先生はきょうの映像を見てどうお感じになりましたか。
牧野 映像は的を射ている。すばらしい感性です。つまり、これが先ほど腐らないとおっしゃついましたが、何年たっても価値を失わずに、観客のもとに出ていくんだろうと思います。そういう意味では心配ない。ただ、ここでひとつ、私の「マンガ楽観論」を披露させて下さい。
私が京都まで行ってマンガを教えているということに対して、とくにマンガ家仲間から、「お前はなぜわざわざ京都あたりまでマンガを教えに行くんだ。これ以上作家つくってどうするんだ」と言われます。大変な思いではありましたが、マンガ新学科をつくってからテレビ、新聞など取材ラッシュでした。そのときに記者さんたちも異口同音に「何をするんですか。卒業生はどうするんですか」とおっしゃる。―私の答えは、先ほどのディズニーランドのこと。「ディズニーはアメリカの最先端技術といつも一緒にありました。つまり、無声映画からトーキーになり、カラー化し、ワイド化し、コンピュータ化する。コンピュータ化する過程で、ディズニーランドというのを創ったと考えています。ディズニーという漫画家の頭のなかで一つのキャラクターが時代と共に成長し、どんどんリアルな形になってゆく。無声映画から音や色をもち、触れられるようになってきたという過程を見ていますと、その延長線上に、―ここからが問題なんですが、―ロボットがあるんだ」と。
いま、ソニーとかホンダの技術者たちは、みんな手塚ファンでアトムで育った時代の人たちである。つまり、いまの自動車産業とかパチンコ産業をしのぐ分野になるんだと。「いや、ロボットはロボットでマンガではないしょう」といわれるけれども、そのロボットのシミュレーションをしているのは手塚さんであり、藤子さんであって、「ドラえもん」の猫型ロボットと共生したときに、人間はどういう問題を抱えるかということを、早い時期からシミュレーションしてきたんだと。だから、これは必ず何十億円でも何百億でも投じてやるであろうソニー、ホンダのロボット開発。―そのほかの大学でも、うちは顔をやりましょう、うちは腕をやりましょう、というふうに開発していますね。これが集結したときに、すばらしいものが生まれるだろうという予測がつく。そのときにこそ、漫画家の感性というものが役に立つ。うちの学生はそこで役に立つんだ!―これが私の話“マンガ産業楽観論”です。