そこから作られたのが今のハリウッドムービーで、それがシステム化され、作品をどういうふうにセールスしていくか、あらゆる角度からアメリカの英知を結集した結果がこうなったわけです。ハリウッド映画にはつまらないものもたくさんあります。なかには本当に良い作品もある。そういう意味では、レーガンのおがけでハリウッド映画のマーケットが広がって、作品のレンジも広がったといえます。
いま、日本アニメというのはそれに似た可能性をすごく秘めています。非常に苦しいなかで安い予算でつくってきた天才たちの作品が評価されると同時に、数多くの日本の子供たちを楽しませるようにつくられてきた作品も評価されつつある。では次はこの産業をどうしていくかというところを考えることが重要だと思います。答えになっているかどうかわかりませんが、それを本当に考えると、自分でまずやれることをやろうというのが、私のいまのご質問に対する答えです。
田中 経済的に成立することが作品の使命なので、何人を食べさせていけるかということは絶対条件として必要なことだと私は思っています。ただ、私のいまの立場自体は、ゼロから1というか、モノをつくる側の立場です。いま竹内さんがおっしゃったこと、それから佐藤さんもおっしゃったこと、つまり経済としてそれを商品としていかに世の中に流布し、稼がせて回収していくかというところとは、ちょっと私は違うスタンスで発言しているということがあります。
いかに食べさせていくかという点では、そのように「加工」してでもビジネスとして成立させるのか、もしくは宮崎駿がこだわったように自分の作品がどのような形で世の中に出ていくのか、この選択が問題になります。「もののけ姫」で宮崎駿は経済を重視せずに、自分がどういうものを作っていくか、対社会、対世の中に自分の作品をどのように存在させるかということにこだわった。これは高く評価しています。