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「もののけ姫」の映像に手を入れたということを一般の方々がよくおっしゃるんですが、結論としては、今富沢さんがおっしゃられたとおり入れなかったと聞きました。手を入れない形で公開をして、興行的にはアメリカの評価はまちまちであった。どちらがよい結果かはわかりません。いままでのアニメだったら手を入れなければ配給しないと言われて勝手に編集させられていたものが、この作品の配給では、ディレクターの意思が尊重され公開された。この意義は非常に大きいと思います。

宮崎さんの作品、例えば「トトロ」を全米で何人が知っているかはさておき、「トトロ」をうちの息子、娘たちに見せたい、見せているという映像業界人たちは世界にたくさんいます。最終的にかかったお金に対して何人が見ているかという点でいくと、非常に成功しているといっていいのではないでしょうか。

そういうニュースが日本であまり語られていません。話にあがるのは「ポケモン」だけです。ちょうど昨日もハリウッドからお客さんが来て話したのですが、もし「ポケモン」だけだったらハリウッドのジャパニメーションに対する対応は簡単だと言っていました。日本のヒットしている作品だけ買っていけばいいわけですから。ところが「ポケモン」の次に「デジモン」という作品がでてきました。この「デジモン」もまたアメリカでヒットしています。今、ハリウッドの映画人たちは、日本のアニメーションの何が優れて、どういうふうにつくっていて、これからどうしていくのかということを、有名なプロデューサーなどが直接足を運んで日本人以上に積極的にリサーチしています。

20年ぐらい前を思い出してください。ヨーロッパ映画とアメリカ映画が世界で公開されていました。日本で公開される映画というのはアラン・ドロンとかジャン・ポール・ベルモント主演のフランス作品と、チャールトン・ヘストンなどが主演のアメリカ映画がほとんど同じ比率で上映されていたのが、ふっと気がつくと、いまヨーロッパ映画というのは単館などでやっていて、メジャーの劇場はハリウッド映画ばかりです。何でこうなったのか、以前ハリウッドのプロデューサーが話してくれたのですが、レーガンが大統領に就任して一番最初にやったことは、アメリカの政府の要人、科学者、技術者、英知を結集して、いまから何年以内にハリウッド映画を国策として、産業として、世界中のマーケットに広げるには何をしたらいいか徹底的に研究して報告書を出してくれと命じたそうです。

 

 

 

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