そうなると、もっとこういうアニメ文化に対する子供のニーズが増えてくると思います。いまはほとんどテレビ局が用意した定食を食えと。定食AかBかCか、それしか選べないんです。たぶんこれからは双方向インターネットでユーザー側が、私はこういうものを見たい、僕はこういうものを見たいと選ぶようになって、そうすると、もっと作り手に対して刺激にもなりますし、その意味では、無理に正々堂々と、俺のやっていることは芸術だというのは、これはいくら野崎節であっても、言っても仕方がないですよ。ただ、優れた作品をつくって世の中で評価されているうちにそれは主流になっていくと思います。
いま、日本の歌舞伎などが国宝のように珍重されていますが、歌舞伎のスタートしたときをみてください。「伎」という文字は、当時下流層の人間を指しているようなものでしょう。ですから、どこの文化も、どの時代の文化も野草から大木になるいきさつがあるので、その変換期に戸惑いがあっても、それはおかしくはありません。むしろ自分で芸術だと主張しなくても、もっと正々堂々として芸術をつくる意識でもっと質の高い、もっと世界的に訴えられるようなものをつくっていただきたいと思います。
野崎 ありがとうございます。莫さんも国際人だし、隣にいらっしゃる清谷さんも国際人で、フランスに非常にお詳しい。国際人は、自らが、俺のやっていることは芸術だと威張らなくてもちゃんと芸術だとわかってくれるんです。でも、文部省は、こちらが芸術だと言わないとわからないから、僕はわざと言っているんです。これが野崎節です。
竹内 莫さんのお話に同感です。すばらしいことを言っていただいて、ありがとうございます。ITによるグローバリゼーションで何が変わるかというと、アニメーションやマンガというのはどちらかというとエンターテイメントです。エンターテイメントに芸術性を持ち込むかというのは、ある意味、ビジネスレベルではどうでもいいと思っています。