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竹内 前向きに夢を語ると、はっきりいっていろんなところで叩かれます。私はオタクであるが、いま自分がやっていることをすばらしいと思わなかったらどうするんですか、ということを、堂々と話すと、お前は生意気だとか、逆にこの国ではそういうことが多いんですよ。

 

野崎 この東京財団というところは高等教育を支援していく財団なんです。そこでどうしてアニメーションが入っていないのかというのも私の一つの疑問であって、大学院だけが高等教育じゃないでしょう。だって、大学院を出ていても何の役に立たたない人だっているわけじゃないですか。役に立っている人もたくさんいますけれども。でも、大学院を出ていなくたって、こういうすばらしい映像で人々の心に訴えることできる人、アーティストもいるわけです。これを高等教育と呼ばずにして何と呼ぶかということを私は言いたいですね。

 

牧野 私は読売新聞に15年間いました。私がマンガを描いているすぐ横は文化部だったんですが、そこに美術担当は一人しかいなんです。大新聞社でも文化部に美術記者というのは一人か二人しかいないんですね。なかなかご自分で絵を―例えば印象派にせよ、そのほかルネッサンス期の絵画にしろ、同じレベルでマンガを評論する―自分の目で評価するというのはなかなかできないし、していても言葉にして第三者にそれを言うという勇気はお持ちでない。

マンガの一般読者も同じです。一ファンとして読んでいてもそれを読んでいるよということを自分でちゃんと理由づけて、こうこう、これだからマンガ鑑賞はすばらしいんだ、恥ずかしくないんだとはっきりと言える人が少なかったのです。

手塚さんは私たちの先輩ですが、PTAの会に呼び付けられて、悪書の製造人としてつるし上げ状態になったのはついこの前の話です。それが、来年、2001年4月からは、中学校美術指導要領のなかにマンガ、アニメーション、CGを教えなさいというような文言が入ってきているわけです。これは大変な変化なのに、その「悪書だ」と言っていた状況から、「教えなさい」となった、―その落差に対する説明が、日本の場合は何もないんですよ。つまり、なぜ悪いと言っていたか、なぜ今度よくなったのかという説明はないんです。

 

 

 

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