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牧野 いまの学生たちは、すでに先生がどのように枠を決めていようと、―日本画であれ、洋画であれ染色であれ―もうそういうことだけにこだわりません。「僕はアーティストです」と表現します。つまり表現者と自分を位置づけているわけでして、ジャンルを意識しているのは教師と理事会であって、学生は決してとらわれていないのです。

 

野崎 そうですよ。どうして漫画家はアーティストの集団じゃないんですか。オタクの集団なんですか。

 

竹内 結局、それはだれのせいでもないような気がします。日本ではそういった観点が欠けているんですよ。いま私がお仕事をしている監督さんたちと一緒に海外に行くと、本人にとっては予期せぬことなんですが、名前を言った瞬間に、あなた「メモリーズ」の監督さんの誰々ですかというと言われる。海外のメディアの人たちは、ゴッホと同じかどうかわからないけれども、相当の尊敬をもって、「是非私たちのこういう会のパーティに来てください」と言ってくれます。

それから、私が古くからお仕事している漫画家の先生が以前に話していたのを思い出したんですが、この先生は日本でマンガが大ヒットしたあとニューヨークにずっと住んでいまして、向こうに行って向こうのいわゆるビジネスマンたちと話しているときに、彼女は日本で有名なコミックアーチストだよ、と誰かが紹介すると、「それはすばらしい。ぜひあなたを招待したい」と。いわゆる口で言うだけではなくて心からアーティストというものがいかにすばらしいかと考えている。私はあなたの作品を読んでない。しかしあなたの作品を見てなくても、あなたがそのような素晴らしい活躍をしているのであれば、是非そのすばらしさを様々な場で広めたい、というような提案をしてくれるようなことが数多くあるそうです。日本はそういうことは非常に少ないです。

 

野崎 いけないですね。

 

 

 

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