このことを、今回も皆さんそれぞれの言葉で表現されています。竹内さんも「映像を見せたとたんに学生の反応がすごいんですよ」と。これは、まさに現場でないとわからないことです。私も、この映像をみんなに見せれば、学生がどんな反応をするか想像がつきます。それくらい、この映像がもっている力というのは強いんだと思います。
野崎 それは、60歳の人のリテラシーと40代のリテラシーと、20代のリテラシー、それぞれ違います。何で違ってきたかというと、昔は学校でお勉強ができてほめられたんですよ。だから、単に絵によるリテラシーが軽視されてきただけなんです。情報量は圧倒的に絵のほうが多いんですよ。頭に訴える、心に訴える力は絵のほうが圧倒的にあるにもかかわらず、文字のほうに重きが置かれてきただけのことであって、これからはそれを変えていこうというのがこのフォーラムなのです。
日本が文化的に世界に発信して世界から喜んでもらうためには、絵によるリテラシーを選択すべきなんです。日本語でやるよりも。竹内さんも、田中さんも、こうやって立派にやっていらっしゃるわけだから、これをどうやって芸術的、文化的、産業的に後押ししていくかというのが、このフォーラムのひとつのバックボーンでもあるわけです。
田中 すごい面白いエピソードをいま思い出したんですが、一緒に仕事をさせていただいたある監督が、「僕はインスピレーションで絵を描いているんですよ。でも、このことは恥ずかしくてついちょっと前まで言えなかった」とおっしゃったんですね。つまり、インスピレーションみたいなもので自分の表現力というもののバックグラウンドがあるということだというと、周りから軽視されてしまいそうだと、彼は考えていたわけです。もっときちっと考えて、こういう理屈があって、この絵にはこうい説得力とこういう意味があるということを時間をかけてきちっと描いた絵だということを、あとででも理由をつけて出さないといけなかったんですね。