もう一人、私の友人でフランスのドミニク・ベレという、この人はル・オタクといって、結構日本でも有名なのですが、日本のマンガを20年くらい前から自分で直接日本の出版社へ買い付けしてフランスで売ろうとした人です。当時は、どの出版社も取り扱ってくれなくて、自分で出版社をつくって、マンガ雑誌を自分たちのところでフランス語に訳して、製本して、販売しようとして本屋にいったら置いてくれなくて、自分で本屋もつくってしまってビジネスしている人です。
彼がよく私のところに来ますが、「竹内、時代は変わった。この3年ぐらい、いままで俺を無視していたフランスの人たちが、もっと日本のマンガをいろいろ扱えないないか、大手出版社がいままで全然扱ってくれなかったうちの出版の本を扱いたいんだがと、電話してくる。」いきなり何でだと聞いたら、お客さんが「この本は扱ってないのか」、「インターネットで見てもフランス語版が発売されていると出ているが、どこの本屋にもないから置いてくれ」と言うそうです。こういう現象はもうすでに何年も前から起こっています。ここ1、2年でそれがかなり表面化してきているなと思っています。
野崎 牧野先生はマンガ学科をおもちですが、こういうふうにかつてオタクと言われものがいまはもう芸術なんですよ、世界的にみて。たしかに芸術と認められているわけです。
竹内 芸術かどうか。芸術の定義は難しいんですけれども、ただ、マーケットとしては確実に成長しているのですが…
野崎 それは、芸術という言葉を使うのが恥ずかしいだけのことであって、それを使ってしまえばいいんですよ。