日本財団 図書館


田中 先日、昔見た「サスケ」というアニメ作品をビデオで見てみましたが、全く劣化してないんです。不思議だなと私も思いました。20年前の映像なのに劣化した感じは全然しませんでした。

これはきっと、私たちが描いているものが、信条だったり、ドラマだったり、やはり「作品」をつくっているからだと思います。流行りのことをやっているわけでもなく、キャラクターという何もないところに息を吹き込んで、そこにドラマという要素を加える。こうした意識が作品に生きているからではないでしょうか。

 

牧野 例えば私の場合、何故、マンガの世界に引き込まれたかというと、中学校の頃に見た「白雪姫」だったんです。こんな世界があるのかと驚いたものです。ディズニーの心の原風景が余すところ無く描かれていると感じます。しかし、それ以後多くのすばらしい作品が発表されたのですが、やはりウォルト・ディズニーの初心である「白雪姫」を凌いでいないのではないかというのが私の個人的な感想です。ディズニーの「白雪姫」に対して「ナウシカ」、「トトロ」―田中さんは「トトロ」もプロデュースしていらっしゃいますよね。

 

田中 はい、第二プロデューサーとして現場でスタッフを全部まとめてつくりました。

 

牧野 その「トトロ」というキャラクターが活躍する背景とか、そういう日本人の原風景みたいなものがあの作品にはあると思いますが、これは違うものなんですか、同じものなんでしょうか。

 

田中 基本的に、「白雪姫」のなかで描かれている世界というのは、私たちが今も目指そうと思っている世界です。我々にとっての映像の原点でもある「白雪姫」と比べるのは非常に難しいのですが、「トトロ」という作品が日本人の原風景的な材料をもっているといわれると、たしかに、私たちがアニメをつくっているときに、海外に向けてつくるときのいつもの発想は、自分たちの知っている絵と、自分たちが信じて描ける絵を描こうというふうに、「トトロ」以降なってきたなという実感があります。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION