牧野 これはNHKのテレビだったと思うのですが、できるまでの記録というか、たしか画面に出てきて発言されたのは土井さんだったと思うのですが、そのときに「とにかくロボットというのは役に立つものをつくろうとして皆が努力して、ちっとも成功した事例がないではないか。役に立とうとして皆失敗していそ。今回は一切役に立たないものをつくれということで、ソニー社内の反対を押し切って、ほとんど袋だたきに遭いながら私はアイボをつくった」のだという話をされていました。
高城 でも、最後はやはりそれができる技術力というところにあると思うのです。新しいものというのは3つのハードルがあるのです。赤で書いてしまおうかな。まず1個目は、それができるかどうかの技術力、テクノロジー、これは非常に重要です。その考えがあってもできるかどうか。アイボは見事にやりました。2つ目のハードル、コストです。ホンダのP3のように1個2億円ですと言われても困るわけで、コストは次の2個目の課題です。
3個目の課題というか、これが最大の問題で、アイボだといい例過ぎるから違うことで言いますと、クローン羊ドリーがあります。クローン羊ドリーはクローンというテクノロジーの第1ハードルを越えました。それで2個目のハードル、あれをいっぱいつくるのにどれくらいの金がかかるのか、それだったら普通に牧草で育てた方がいいのではないかとかいろいろ言って、今ようやくコスト的なハードルもクリアして、これからクローンのうまい牛が食えるとか、そういう時代に突入しつつありますが、3つ目のハードルは、日本語で言うと生理みたいなものです。感情的にいいとか悪いとか、生理的にいいとかと日本語で言いますよね。あれです。クローンを果たしていいでしょうか、と僕が今聞くとしますよね。そうすると、普通の羊は食べるくせに、クローンは悪いとかというのが、生理的にどうも越えられないのではないかというのが今課題なのです。