野崎 ロンドンで流行りに火をつけたのは、確かにアサヒビールと三井物産の合弁でした。だから、アニメの文化で誰が担い手になるべきなのかをちょっとお聞きできたらと思います。
高城 わかりました。回転寿司の話と一緒にすると余りよくないのですが、回転寿司は香港の人が世界中に持っていっている。日本人だけが持っていっているわけではなくて、実際香港の人が随分持っていっています。回転寿司の話はさておき、大切なのはブランディングもそうですが、目利きをどう育てるかということです。海苔があります。海苔に「京都」と書くだけで定価は1.5倍になります。ブランドというのはそういうものなのです。「京都」と書くだけでいいのです。京都は言わば目利きの集合体だったわけです。目利きは何かということを、これからお話ししたいと思っています。
目利きとは一体何か。僕らの仕事では、コンテンツ業界でよくこういうことをやります。「小室哲哉以前」、「小室哲哉以後」とよく言われるわけです。小室哲哉以前の音楽プロデューサーは一体誰ですか。よく知らないのですが、服部何とか先生ですか。小室哲哉以前で音楽プロデューサーはほとんど思い浮かばないのです。小室哲哉が初めてプロデューサーというものをちゃんと世の中におさめたわけです。小室哲哉の仕事というのは基本的には目利きです。そこら辺にいるB級タレントを拾ってきて、ここら辺に転がっているはやりの音楽を拾ってきて、この辺のグラフィックスをつけて売るという目利きの仕事なわけです。そうやって考えると、今目利きというのは音楽以外のありとあらゆるジャンルで非常に活躍しています。
例えばファッションデザイナーよりも、皆スタイリストになりたいわけです。スタイリストは自分で服を作りません。目利きです。ミュージシャンになりたいのではなくて、DJやプロデューサーになりたい。すなわちレコードをつないでいく人です。そういう目利きが今非常にポイントなのです。我々のこのアニメの業界、マンガの業界では雑誌の編集者だったり、アニメの業界で言えばプロデューサーの仕事であったりするわけですが、それは小室哲哉の仕事を見てもわかるように、音楽業界だけで成立させるのではなくて、ファッションのいいところ、アイドルや芸能界のいいところ、海外の音楽を混ぜてプロデュースします。