ですから映画が公開された週でほとんどの勝負は決まって、今までは公開週に物凄いコマーシャルフィルム、すなわち宣伝をテレビで流して公開の動員を集めて話題作どうのとやっていたのが、ほとんどこれが効かず、メールと口コミによって今のヒット映画というのが実際に生まれているのです。
「97年のゴジラの失敗」というエピソードがあります。この映画は物凄い数のコマーシャルを打ったにもかかわらず、観客が全然入りませんでした。今まで映画というのは、ある程度のコマーシャルを打つと、それに合わせて大体のお客が来ます。コマーシャル数と動員数が比例しない形がこの97年から始まりました。これはヤバイということで僕らも97年、98年と調査をしたのですが、もう圧倒的に多くの人はマスメディアと言われている新聞、テレビを信じていません。メール、携帯を信じています。
例えば皆さんも思い当たることがあると思いますが、最近テレビはよく見るが、どうも信じていない。テレビというのはよく見るので知っている、認知メディアとしてのテレビ。例えば「買ってはいけない」という有名な本がありますが、ほとんどテレビでは扱いません。ところが全員知っています。テレビではやらないのになぜ知っているのですか。雑誌でもほとんど取り上げないのに「買ってはいけない」という本を知っている。なぜ知っているか。それは広域的口コミによって物すごい速度で情報のサーキュレーションが、ここ3年間スパイラル的に向上しているからです。どうやらメールや携帯の話は知っているのではなくて信じている。逆に言うと、テレビは信じなくなったということが言えるのです。
これはどういうことかというと、我々はテレビをただ見ているだけと。例えばテレビでおいしいラーメン屋さんの紹介をやっています。でも信じませんが、友達から電話がかかってきたら非常に信じます。友達の「あそこのラーメン屋さんおいしいんだって」という情報を重んじる傾向が大変強くなりました。