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ですからこの間にあるものを一切飛び越していく、この矢印は今最も変わっている。それを世の中ではITと言うわけでございます。

これはアニメの世界でもマンガの世界でも世界共通の動きでございまして、例えばつくったアニメーションをテレビで流して人々に届けるというのが、今日のテレビを中心にしたアニメのスタイルでしたが、そうではなくて、インターネットや携帯で、すなわちここの矢印が変わっていく。これは当然ながら誰でもわかることです。そのことはどうでもよくて、今この矢印をもうちょっとコンテンツ的な側面から見てみましょうというのが、最近の僕の一つの大きなテーマです。

このコンテンツ的な側面から見ると、まず我々はどうやらこのIT革命と言われているものの中でコンテンツ、仮にすばらしいAという作品があったとします。そうするとこのAという作品を、どうやってすばらしいということをここに届かせるかというときに、かつてはさっき言ったように新聞の仕事でした。ですから朝日新聞の映画評でこの映画はおもしろいと取り上げられると、人々にようやく届くというマスメディアの仕事だったのです。しかし、これは今年、2000年の調査で、映画を見て、映画館を出て10分以内に携帯電話を取る人が20%以上います。この話している内容はわかりません。ちなみに98年の時点では16.5%でした。これはどういうことかと言いますと、映画を見終わった瞬間に携帯電話を手にします。内容はわかりません。ひょっとしたら留守電を聞いているかもしれませんし、友達とアポイントを取っているかもしれません。ただiモードを見ているだけかもしれませんが、携帯電話を手にする人がもう今は2割いるわけです。当然ながら今見たばかりの映画ですから、電話を手にして相手が出たら話します。メールを送ったらその話を書きます。ですから今までの新聞の評ではなくて、実は新聞とは別にここにもう一つの矢印ができているのです。

例えば、これをG君にA作品がすばらしいとかつまらないという話が届くまでのルートは、かつては新聞・テレビでした。ところが、今はメールや携帯が実際は市場の多くを占めています。これはどういうことが起きるかというと、僕はメールと携帯をよく「広域的な口コミ」、「広域口コミ」と言っていますが、今まで新聞とかテレビであの映画はいいとかおもしろいと言われていたものが、どんどんメールや携帯によって、広域口コミによって噂が広がります。

 

 

 

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