そういうスピリッツが備わっているから、お金でないところで勝っていけるんだなという気がしたんですね。そういうことを、僕たちはこのフォーラムで訴えていければいいなと思っています。
そうすると、おのずとお金がついてくるような気がするんですよ。アメリカのハリウッド型のまねをしてもお金はついてきません。投資家はついてこないと思います。
牧野 こういう小さな部屋から生まれるという構造は、実はコミックの制作現場にもあって、松本零士さんが九州から上京したときに、例の、押し入れの中で、余りにも不潔な環境であったためにサルマタケが生えてきた、などという、象徴的なお話がマンガの作品に登場したりするんです。
つまり、そういう何とも日本的で生々しい生活環境の中から創作物が生まれてくるということは私も実感として分かります。環境がよくなり、システマティックになってくると、さっきおっしゃった、品格が落ちてきたり、グレードが下がってしまう。コンピューターの容量ではないんだ、という問題が常にここにあるわけなんですね。
野崎 いつまでも貧乏暮らしがいいということを私は言ってるんじゃなくて、そういうスピリッツを忘れないでほしいということが大事なんじゃないかなと、素人ながら思います。
それから、貧乏暮らしから抜ける方法として、演出権を取り戻す。それはお金が必要なのか、あるいは、相手方の理解が必要なのか。多分両方だと思うんですが、そういうことによって、省くべきは省き、コストは下げ、プロセスを逆転させ、そういうことができるようになる。それで自分のオリジナリティーになっていく。そういうことを世話するおじんの営業力、仲介機能というのは確かに必要だと思います。
ですから、そのスピリッツを持っていればおのずと、例えば東京財団が何らかの起爆剤になって、繰り返しになりますが、日本がIT戦争の第2幕では絶対に勝たなきゃいけないので、マーケット力が必要なんですね。