演出権というのは、シナリオからどのように映像に落としていくか、どうやって編集するか、どうやって音をつけていくかというところを、全部自分でしないといけないというわけでございます。
そうは言っても、なかなかそれで売れる作品はできません。1人よがりの作品は何ぼでもできますが。
そこで思いつきましたのは、私ちょうどミノルタの顧問をしてまして、ミノルタにはミノルタプラネタリウム株式会社というのがありまして、プラネタリウムをやってるわけですね。プラネタリウムというのはたくさんありますが、普通、星しかやりません。ところが、アメリカである会社が、そこへ大型ビデオプロジェクターを7基とか5基据えつけまして、パーシャルに投影して、全体で1つの映像にしてしまうという。部分投影しながらシームレスにつながるという。これはデジタルだからできるんですが、そういうシステムを開発いたしまして、ミノルタがそれをやっているわけですね。
で、その映像をつくらせてよということをお願いしましたら、ちょうど7月に、モントリオールでIPS、インターナショナル・プラネタリウム・ソサエティーという、これは2年に1回あるプラネタリウム映像のお祭りだそうですが、国際会議。そこでプラネタリウムの映像のデモンストレーションをやるんだと。10社ぐらい参加して、一晩かけてやる。それに出品してくれないかという話が来ました。
その話が3月28日でございます。卒業した直後。7月9日ですから、たった3カ月しかございません。シナリオも何もない状況でございます。
で、さすがの私も、全天周映像なんで、今ごらんになっているのが大体16mドームです。直径16mドームですから、大体映画館のスクリーンの10倍以上スクリーン面積がございます。これ、まともに計算したら、気が狂うんですね。つくば博のときでも、直径25mのドームの計算をするのにスーパーコンピューター「Links 1」を使って、40人ぐらいかけて1年半ぐらいかかっているわけですから、それをパソコンで3カ月というと、どうもまた円谷プロダクションをだましたみたいなことになるかなと。