これは、先ほど申しました、CGのクオリティーがなぜ20年間で逆に下がってきたかという話と通じるわけですが、実は、CGの初期のころ、アーティストたちはみんな自分の思いで完成作品を、音楽、編集も含めて自分でつくってたわけですね。ところが、だんだんコマーシャルその他で売れるようになりますと、コマーシャルなんかはどういうつくりになるかといいますと、スポンサーの会社があるとしますと、スポンサーの広報宣伝部でプロデューサーが立って企画が立ちます。それから、電通のような一流の代理店に注文が行くわけでございます。そうすると、一流の代理店にはプロデューサー、ディレクターが立って、そこからカンパケ、完成作品をつくれる編集とか、音の細工も実写もやれるような制作プロダクションに次に行くわけですね。ここから、この部分はCGというと、CGプロダクションに下請が出される、音楽プロダクションに音が行く、実写はカメラマンたちを雇ってやるというように、分業になるわけでございます。
つまり、一番端っこにCGプロダクションがくっついているというのが普通でございまして、そうなりますと、演出をするのはその1つ前のところの監督がやるわけでございまして、CGプロダクションには演出をする権限が全くないわけでございます。
そうすると、例えばコップ1つつくっても、これを机の上のぽんと置いて、カメラは真っすぐ行くという演出だったら、後ろつくらなくていいんですね。あるいは、遠くに置いてあって、ロングショットでしか撮らないよというのであれば、本来細かく描写する必要はないわけです。しかし、演出権が全くない状態でつくらされると、とことん細かくつくらざるを得ない。映像をつくるというよりは、このモデルをつくるという。映像屋さんじゃなくて、モデル屋さんということになってしまうわけです。
ですから、今、CGアーティストたちが主として時間を割くのは、モデリングのところでございます。形をつくるというところでございますね。
どうしても映像をつくるためには、演出権を取り戻さないといけないんですね。