20年前のプロダクションが持っていた億単位の、30人ぐらいで共同利用していたコンピューターのほぼ10万倍近いパソコンが、10万円で買えるわけでございます。
ですから、考えてみると、20年前のアーティストと比べますと、今のアーティストたちは、10万円のパソコン使っても、コンピューターそのものの性能は10万倍ぐらいでかいわけですから、10万倍ぐらいいい絵ができて当たり前と思うんですが、どういうわけか、どうも絵のクオリティーは年々下がっております。80年代前半から85〜86年のアーティストたちがつくり上げてきた映像というのは、今のCGアーティストたちがつくる映像と比べてはるかにレベルが高いと言わざるを得ません。
これはどうも、80年代前半の映像は、全く飯が食えないので、純粋に作品をつくる。思いだけでとことんこだわってつくっておりましたから、コンピューターは遅いんだけれども、作品はすばらしい。ところが、今は職業としてやります。そうしますと、自分勝手に作品を演出してつくっても売れませんので、相手に言われたとおりつくるという形。しかも、コンピューターが安くなるにつれ制作費もどんどん下がっておりまして、20年前に1秒200万円取れたCG制作費が今1秒1万円とか、それも100分の1以下に下がっておりますので、できるだけ手を抜いてわっとつくらないと御飯が食べられないという状況もたしかにございます。
パーソナル・コンピューターを主体にしたコンピューターグラフィックスといいますか、アニメーションのプロダクションとはいかなるものかというのは、アーティストたちに自立しなさいと言っても、1人でやるというのは非常に難しい。ですから、ちょっと実験的に、どういうつくり方があり得るのかということをやってみないといけないなと思いまして、6年ぐらい前から、自分で映像専用パソコンをつくりまして、当時100万円ぐらいかかりましたが、それを使って、パソコンをベースにしたイメージファクトリーを再開いたしました。
その映像がございますので、ちょうど5年ぐらい前から、宝塚造形芸大に私が行きましたときの1年生ぐらいからずっと一緒にやってきた流れ、ハウ・ツー・メークをずっと撮っておりますので、こんな環境でつくってきたんだよ、というのをちょっと見ていただきたいと思います。