そうしますと、当時彼たちは相当の実入りがございましたので、それをためて、ちょうどそれから2年後ぐらいに自立をしたわけでございます。
その中で、自立できない子もいるわけですね。エンジニアであるとか、これは自立できない。それから、東京芸大を卒業して来て、静止画一本やりで、展覧会へ出して頑張ってる。賞はもらうけれども、お金にならんという。絵の具でかいた絵は売れるんですが、CGでかいた絵は全然売れないんですね。で、この子たちはどうしようかというんで、これは先生にしかできないと考えました。売れない子たちは、ほかの仕事をせざるを得ないわけですが、実は、先生になれば一番いいわけですね。
ところが、ご承知だと思いますが、大学の先生になるためには教育歴、研究歴というのが必要でございます。これは別に、内規でございますからなくたっていいんで、最近ですと東大で、安藤忠雄が高校中退で教授になるとか、川口洋一郎が博士号がないのに教授になるとか、やっと東大が先鞭つけていただいたので大分楽になりましたが、当時は研究歴と教育歴が必要でした。
初めて先生になるのに教育歴があるはずがないわけでございまして、どうやってやるかというと、非常勤講師で教育歴を稼ぐと。その間個展とか出して賞をいただくとかそういうことをやれば、教育歴と研究歴がくっつくわけです。
その子たちは全員、牧野先生の精華大学にもお世話になりましたし、あちこちの非常勤講師をさせておりましたので、教育歴はずっと積み上げておりました。で、売れない子たちも、私がちょうど大阪芸大へ行くときに一緒に引き連れていって、3〜4人先生にしたりしまして、これはそれで飯食っているわけです。