各関節にコンピューターを仕込みまして、分散型制御システムにしてやればいけるなということで、一応設計をいたしまして、見積もり取りましたら、1基1億5000万円。最低2基要りますので3億円かかるんですね。黒沢さんが5億円ぐらいで映画つくってた時代ですから、鉄人28号に3億円というと、何やそれは!ということになって、ダメになりました。
その後、山本太一郎が、のちに大ヒットしました「ベルサイユのばら」という映画を撮りにアメリカヘ行きました。アメリカから電話がかかってまいりまして、すごいもん見つけた、物がないのに絵が映る、コンピューターグラフィックスという、お前知ってるか?と言われまして、私は知りませんで、それは何や?と聞きましたら、何かコンピューターで計算して絵ができてしまうんで、実物なくたってええんや、という話なんです。
それを聞いたとき、すぐぴんと来たわけです。物の形というのは、設計図があれば、数字に置きかわりますからコンピューターの中に入る。表面の色とかつやとか、こういうものも、屈折率とか色彩は数字になりますからコンピューターの中に入る。光も、物理的現象ですからコンピューターの中に入る。入らないのはカメラだけでありまして、カメラさえコンピューターの中に入れることができれば全部揃う訳です。
ところが、カメラにはレンズという厄介なものがございます。当時のレンズの設計というのは、スーパーコンピューターを使って設計しているわけでございますから、そのレンズのついたカメラをコンピューターの中に入れてシミュレーションするということは、普通のコンピューターでは不可能なんです。
そこで、レンズのないカメラ、ピンホールカメラというのがあります、針穴写真機。これならいけるやろうというわけで、針穴写真機をコンピューターの中に入れますと、カメラと物体と光が入るんでやれるということですぐやり始めまして、約1年で「鉄人28号」の映像をつくりました。