しかし、これは一番数値化しにくいものです。それから、ご本を拝見すると、暗黙知というような言葉も出てきます。難しい問題をテーマにして、これからも続けてお話をしていくわけですけれども、これらのキーワードをどんなふうに使っていくべきかというご意見を、今までの議論を踏まえてお話いただけたらと思います。
日下 いま小野さんがアフリカの精神をおっしゃっいました。たぶんアフリカの人にとってみれば普通のことだけれども、私たちにとってみればショックだったとか、珍しかったとか、そういうことがお互いにたくさんある。それはたぶん文章よりマンガとかアニメのほうが表現がしやすい。あるいは、知らず知らずのうちに出てしまうであろう。だから、日本の心とか日本の生活とか、日本の人間関係が知らず知らずのうちにマンガ・アニメ作品に出てしまって、我々には当然のことが、外国の人々にショックを与えている。あるいはアジアの人が真似をしている。
これは習慣や風俗の面でありますけれども、少しレベルをあげたことで話をすると、「ミュウツーの逆襲」というのがイギリスで大変に流行したなかで、イギリスの国教会の人が幹部にあげたレポートで、「これは弾圧すべきでない。むしろ奨励すべきである」というレポートを書いたと読売新聞に載っていたそうです。それはキリスト教精神にぴったりであると。主人公のサトシは悪と戦って死ぬ、そして蘇る。これはキリスト教の物語とまったく同じになるんです。そこまで考えて日本人は作ったのか知りませんが、そういう読み取りをその人はしたわけです。
で、私たち日本人からみると、それしか読めないのかと、悪と戦ったとおっしゃるが、あの作品で主人公が戦ったのは違う理由なんですよね。キャラクターの本物とコピーの間の戦いの中に分けて入って、くだらない戦いはやめろと言って死ぬんです。本物と偽物の戦いはくだらんと言っているんです。そして、サトシはそこで巻き添えくって死ぬというところを、このイギリス国教会の人は何も読み取っていない。
いま日本中あるいは世界中でコピーは悪いということになっているんです。