それは、芸術的ですばらしい、だから、じゃ子供にはわからない。そうじゃないんです。幼児が香港映画ではこの映画を見ていて、みんな大笑いしている。話がちゃんとついていけるんです。このアニメを監督したミシェル・オスローさんというのは子供のときアフリカに住んでいた経験がある。だからアフリカ的なものが身についていて、それをフランス的な素養をとおして提出しているので、例えば村の昔の話ですから、アフリカの人たちは上半身裸です。女の人が乳房を出している。それがまた実にいいんですけれども、そういう描写をしている。
あれを見たら、「ライオンキング」なんか嘘だっていうことがわかりますよ。「ライオンキング」で実際にディズニースタッフはアフリカに行ってスケッチをやっているわけです。表面的に、絵はたしかに。風景はアフリカのスケッチを使っている。しかし、スピリットが違う。あんなのは本当にまやかしだと思いましたね。「キリコウと魔女」を見たら、あ、これはアフリカの感覚というのはこういうものではないかと。アフリカの人に見せても反応がよかったといいますけれどもね。
ちなみに言いますと、そのアニメは、ヨーロッパで非常ないろんな賞を受けて大成功で、アメリカを含めて世界の38カ国に売れている。主要国で売れない国が二つだけある。日本とイギリスだと。画面の美しさには、フランス的なある官能性があるんです。官能性というのは、セクシーで、上品な意味での何かこう優雅さがあって、それをみんなわかってくれるかなと思ったら、本当に見た人はみんな感動していました。その監督は取り囲まれて、僕もポスターを買ったりしました。日本の配給業者が「キリコウと魔女」を買ってくれるといいのですけどね。
ただ、日本の不幸は、「もののけ姫」もすばらしいし、「ガンダム」もあるんですが、日本のアニメのテイストというのは、先ほど言ったように、マンガと同じで日本のマンガは特殊な発展をしました。だから、日本の一般の人はそういうマンガしか受け入れなくなってしまった。ほかのは読み方がわからない。読むのはめんどうくさいというので、フランスのマンガとかアメリカのマンガは読まないわけです。フランスにもいいマンガありますよ。