それともう一つ、フランスの長編アニメが上映されたんです。それはすばらしくて、実は去年のフランスのアヌシー国際アニメーションフェスティバルで長編部門でグランプリをとっているんですが、実は今年4月の香港国際映画祭でも上映されたんです。僕はそれを見て本当に感動して、日本に帰ってからいろんなミニコミに「すばらしい」「すばらしい」と書いて、人にも会うごと言っていたんです。ミシェル・オスローという人のつくった「キリコウと魔女」という話です。
これは西アフリカの民話をもとにした話で、ちょっと一寸法師ににている話です。美術的なデザインがすばらしい。アフリカの風景なんですが、それをある様式化された色彩の鮮明さとデザインでつづる。キリコウという男の子が、生まれときにお母さんに「僕生まれるよ」と言って生まれてくる。生まれたときから口をきいて、その村のいろな危機を救うわけです。別に魔女がいるんです。いろんなキャラクターの描写、そのデザインがため息するぐらい美しくてすばらしい。
この80分の長編アニメは、広島で最初の日の朝上映したんです。そしたら、やはり、みんなわかるんですね。その監督ももちろん来ているんですよ。それに僕はすぐにそのあとインタビューしましたけれども、とくに若い女性など夢中になって、すばらしい、すばらしいと言って感動していました。
念のため付け加えると、これはアフリカの風物が珍しかったので感動したという次元の話ではありません。そんなものはテレビのドキュメンタリー番組でいくらでもある。芸術作品として新鮮で、それがたまたまアフリカを舞台にしていたということです。あくまでも、アートとしての高みに達していることを評価したいのです。僕はここ何年かのすばらしいアニメーションを見ていますよ、「もののけ姫」も含めてアメリカの「トイストーリー2」も。でも、それを超えて、フランス人のアニメファンに「キリコウと魔女、すばらしいじゃないか。もののけ姫と比べてどう思う」と言ったら、彼女は、「そう、でもあのふたつはそれぞれ違うアニメだから」と答えてくれて、どっちが上という言い方をしなかったけれども、僕には、「キリコウと魔女」というのが一番すばらしい。ここにいる方でもしご覧なったら、絶賛しますよ。