で、アメリカでも人気があるし、いろんな国にいっているというのは、一つはそういうことです。あまり、そういうことはみんな言いません。アメリカ人に聞いてもそういうこと言わないけれども、シドニー大学の教授に聞くと、「でも、そういうのが人気があるというのは、やはり、ちょっとエロチックな表現があったりするからじゃないか」と言ったら、「うん、その面は否定できない」と言っていました。そういうものが静かに進行したりするわけです。
それが、実は摩擦のもとに起こるのではないかと僕らは心配です。僕とかアメリカの日本のマンガの研究家のフレッド・ショットなんかと会うと心配するんですがね。つまり、受け入れ方のレベルがいろいろあるわけです。本当に一番ちゃんと受け入れてほしいのはディズニーみたいに大劇場でちゃんと公開して、それでみんなが喜んでくれるということですが、そういう作品はまだ世界的に少ない。「攻穀機動隊」がフランスである程度受けたりするのは、フランスの場合はああいう大人向けのアニメ、大人のアートみたいなものを受け入れる文化的な背景、文化の成熟があるんですね。
例えば久里洋二さんのアニメというのがあります。これは、物語マンガと違いますが1コマもののアニメ化というか、簡単な、あれこそリミテッドの動きです。「人間動物園」という作品、傑作がありますが、60年代に作ったもので、相当前の作品ですが、あれがいまだにヨーロッパで評価が高い。つまり、男が女にいじめられているという構図なんですが、あれがショッキングで、技術的に高くて、今では古典ですが、ああいうものはアメリカだと不謹慎ということになるんです。しかし、ヨーロッパでは非常に受け入れられて、とくにフランスとかイタリアとかああいうところでは今でも評価されています。
だから、受け入れ方のレベルがいろいろあるので、それで日本のアニメが受け入れられているという場合の論じ方がなかなか難しい。僕は単純には言えないと思います。「ピカチュウ」の場合は本当に幼児向けによくできているし、あれは暴力シーンとかないから受け入れやすいと思います。すぐネットワークに乗ったり劇場公開もされやすい。今はあれは本当にアメリカに浸透していますよ。