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こういう世界は、実は、なかなかマスコミには取り上げていただけないし、マンガのなかに入れていただけない。夏目房之介さんはコマと吹き出しがないものは前マンガであると言い切っております。しかし、私の場合、北海道のオホーツク大賞という国際マンガ賞を企画し、岐阜県の宮川村では国際メッセージMAN画大賞を立ち上げました。

多少、皆さんの意識のなかにのぼっているかなと思うものが、高知県のマンガ甲子園という企画でありまして、これはもう十数年来、橋本大二郎氏の大変な力ぞえで進行しているわけですが、初めは、高校生諸君、コマを割ってストーリーマンガのように描いていたのが、竜馬というテーマで描け、黒潮というテーマで描きなさいと続けていますと、だんだんと1コママンガで表現するようになってきて、審査員の読み取り能力をテストされるような1コマ作品が増えてきたりするわけです。

そういう意味では、両極に分かれるのかなというのが、私個人の感覚としてありますが、小野さん、今日はストーリーマンガを中心にやりました。そういう意味で大宅さんのおっしゃるイマジネーションということ、これは劣化したのか、いや、それはまだちゃんと残っているのか、その辺の感想はいかがですか。

 

小野 僕の個人的な意見で言えば、劣化してないというか、いろんな形に変化していると思います。

僕は活字が非常に好きな人間で、テレビは今でもほとんど見ません。マンガが好きなんですが、アニメは見たりしますがね。つまり、日本のマンガって、いつも非常にバラエティに富んできているので、つげ義春の作品などありますよね。そういう作品は想像力が乏しいマンガとはとても言えないと思います。

それから、今、夏目房之助が、マンガの定義で台詞とまわりの枠がないのはマンガ以前だというふうに言ったけれども、必ずしもそういうことはなくて、私も海外の定義で、吹き出しがあって、コマが連続するというのは言いましたが、それは一応原則としてそうなんですが、アメリカでは1930年の大傑作で、台詞がまったくない長編マンガというのがあるんです。これを僕は非常に評価しているマンガで、それをずいぶん前に書いたことがありますが、そういうマンガも存在します。

 

 

 

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