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かなり、あの作品の場合には言葉の説明というのがあまりなくて、ナレーションでボソッと処理したり、困ったときには顔に縦に線を入れるとか、こういうことで表現をしようということをやってきた作品であるわけです。

これは説明ではなくて、画面上でどこまで彼らにわかってもらえるのかという実験をするために、カナダでその訳し方についてもずいぶん研究しまして、2話ぐらいを英語に訳して、子供たちを集めて反応をとる。だいたい平均的には10歳以下、9歳を中心にしてそういう子供たちを集めて反応をとると、まるこちゃんの気持ちがわかるという反応がほとんどだった。という意味で、いろいろなところでそういう実験をしてくると、日本の子供だけではなくて、海外の子供達もあの映像を見てまるこちゃんの気持ちがわかるという。従って、少なくとも10歳以下、これは私の私見ですけれども、それ以下の子供たちというのはかなり世界的に共通な感性をもっていて、社会的ないろんな環境とか背景とかという影響がまだまだ少ない。そういうなかで似たような感性はもっているのではないかという印象はもっています。

それ以上の年齢になってくると、それまでの教育とか、社会的な環境とか、家庭の環境とかいろんなことでそれぞれ、一つのものを見ても違う感覚をもつということがあり得ますから、その辺は一概いに同じように受け取るといううふうにはいかないと思います。日本の場合には、たしかにそれぞれ個性があるんでしょうけれども、おそらく、没個性的に育てられてきている人たち、同じ社会環境でおそらくほぼ同一民族だし、かなり近いものもあって、同じ表現で同じに受け取るという確率はかなり高いのかなというふうにも感じています。

それから、特定の傾向があるかというお話ですね。これは、私どものほうの例でしかお話できないんですが、今大別して二つの傾向があり、一つは世界名作劇場という作品を25年以上、「フランダースの犬」とか「赤毛のアン」という作品を制作してきたわけです。スタイルは確かに日本的な作り方ですけれども、無国籍な作品として、また家族で見られるストーリーアニメということで世界中に受け入れられており、規制を受けることもなく、再放送が繰り返されている作品があります。

 

 

 

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