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逆にいうと、マンガのテイストが違っているんです。マンガに対する味わいの仕方が。だから、こういうことを言った人がいました。「アキラ」という傑作のマンガがあります。アニメになっているものも海外で評判ですが、「アキラ」は、アメリカのマーヴル・コミックスで、英語版が翻訳され、完結されてもう何十冊にもなってもなっていますが、あれが大ヒットしたのは、日本では白黒の印刷ですけれども、アメリカ版はカラーでつくってあるんです。1980年代の初めです。今でこそアメリカのマンガのカラーは全部コンピュータでやります。日本でも一部そういうふうになっていますが、ただ、その「アキラ」のときが最初でした。「アキラ」のアメリカ版を出すときに、初めてカラー化をコンピュータでやる30代ぐらいの若い人がいて、それをやらせてみた。うまくいった。その人はすごい大金持ちになったそうですが、今では当たり前です。でも、1980年代の最初は、コンピュータで色つけるというのは非常に新しかった。

「アキラ」のマンガが世界的に人気があったのは、日本はカラー版ではなく、アメリカでカラー版がまず出て、それに基づいてヨーロッパ版がカラーで各種出たということも大きいと思います。アメリカで当ったのはカラー化したからで、世界的人気になったのはそういうこともある。ただし、「アキラ」は大長編です。一つの話がずっと長く何百ページ続いていくわけです。アメリカの友達が言ったことがありますが、「アキラ」はすごく面白いんだけれども、あの話終わるのに何十冊も買わないいけない、お金が続かなくなるんだと言ったことがあります。その辺がマンガを描くスタイルが違うわけです。そういうようなこともあるんですよ。

例えば、僕らは「少年マガジン」なんかを早くパッと読んでしまいますが、たった20ページぐらいの「スーパーマン」なんかのマンガを、アメリカの読者というのはじっくり味わって読むわけです。速さが違うんです。だから、それはそれで満足しているわけです。そういう点ではマンガの受け入れ方が違うんです。

もともとは吹き出しの文字の話からはじまったんですが、そういうことも関連していて、アルファベットで書いてあるのは小さくても見やすい。

 

 

 

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