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アメリカのマンガは日本でどう受け入れられるかということ、ほとんど受け入れられていません。せいぜい「ピーナツ」です。作者はついこの間亡くなりましたが、マンガの中に犬のスヌーピーがちょこちょこ出ています。あれだってスヌーピーの人気で、犬が出てなかったら、あのマンガはどのぐらい日本に定着したか、僕は疑問です。チャリーブラウンとかいろいろなキャラクターがいますけれども。

「Xメン」とか、そういうものも翻訳は出ていますけれども、おそらく、皆さん知らないでしょう。翻訳が出ていることすら知らないのではないですか。そうしたアメリカのマンガ好きな中心になるマニアがいて、それなりに採算はぎりぎりとれているぐらいの程度で出ていますが、一般の人といったら変だけれども、普通の人たちは本屋さんにあるといってもあまり目につかない。日本は世界的なマンガ王国で、おそらく、印刷部数、発行部数でいったら、世界で文句なく一番ですよ。でも、ある意味では鎖国なんです。

つまり、今申し上げた日本のマンガの特徴、読みやすさ、見やすいけれどもまた深みがあるような、いろんな内容のマンガが、需要を満たしているわけですが、そういう描き方のマンガに慣れてしまっているものだから、例えば、「スパイダーマン」のマンガをパッと見ると、「あ、もう読むのが面倒くさい」「こんな字が多いのもう嫌だ」と、それで拒否反応が起きてしまうんです。読みにくい、時間がかかりそうだと、それで放り投げてしまう。じっくり時間をかけて読めば面白いんですよ。でも、そういうふうにはなかなかならない。

僕は、「マウス」という、これはアート・スピーゲルマンなんていうアメリカでプリッツア賞特別賞をとったマンガがあるんですが、それを翻訳しました。そのときもいろいろ問題があって、吹き出しを訳するときに、原作者の要望があって、正確に訳してくれと、それは当然のことです。ただ、それをやるとはみ出してしまうんで、日本版はアメリカの原書よりも一回り大きい版にしました。そういうこともあった。そういうことが必要になってしまうということはあります。

 

 

 

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