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一つの問題は、こういうことがあるんです。先ほど申し上げましたように、日本のマンガは早く読めると言いましたけれども、それはその漢字仮名混じり文というのが吹き出しに入っている。それは、比較してみるとわかりますが、牧野さんも御存知のように活字は結構大きいんです。吹き出しのなかの言葉は。大きいということは、量が少ないということです。そういうこともあって、コマが増えていくというのはそれは実は自然でもあるんですね。1コマの中でいろいろ説明するためには、文字数を非常に多くしなければいけない。それは見苦しいし、読みにくいということもある。そういうことも相まって、いくつものコマで、アメリカのマンガでいえば、例えば「スーパーマン」では1コマですむところが日本のマンガだと3コマとか5コマに分解されたりするということも、一つには、絵のテクニック上の問題、こういうアングルからしゃべって、次のコマではこういうふうに言うとか、そういうことで時間経過を示しているんですが、例えばそういうことも言えると思います。

編集者といろいろ話したときに出たことですが、アメリカのマンガは1コマのなかに、例えば3人ぐらいがしゃべっている。台詞が三つならんである。そうすると、一つのコマのなかにいろんな時間が入っているわけです。すべてがそうとは言いませんが、そういう場面が結構多いです。日本の場合は、原則として1コマに一つの時間きりない場面が、マンガが多いです。

僕の経験的なものでいくとそれが多いのは石ノ森章太郎でしたが、1コマで一つの時間だけをとらえると、それは非常に明快なわけです。読みやすいわけです。それは先ほど申し上げましたように、アメリカの「スパイダーマン」や「Xメン」はそれをやりたくても、例えば1冊、つまり日本のマンガ週刊誌は300ページ以上あるとしても、アメリカのは「スーパーマン」でたった20ページぐらいしかない。それは、数をやたらに多く、コマをやたらに多くしてたら話が進みません。だからどうしても文字が、台詞が多くなる。しかも小さくても英字なら読みやすいということがあります。それで問題が起きるんです。

ここで話しているのは、日本のマンガは海外でどんなに受け入れられるか、どういうふうになってきたかという話ですが、立場を逆に考えてみますと、その逆のことは皆さん言わないんです。

 

 

 

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