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日本語の特性を生かした知的な笑いですが、高橋留美子はそれをいろんなことでしょっちゅうやります。あの人は、非常にマンガの言葉づかいがうまい。

ちなみに、そういうことに関連して、海外のマンガとの違いでいうと、日本では子供マンガの世界というのは戦前から伝統的に吹き出しの文字は活字で書かれています。手書きじゃないんです。新聞連載マンガは大人マンガですから、台詞を漫画家が手で書いています。でも、雑誌に連載されている子ども向けのマンガというのは、戦前から1930年代からずっと活字文字です。それは、漢字が入りますから手書きよりは活字のほうが読みやすいということもあるんだと思います。しかもフリガナがありますから、そのほうが読みやすいということがあると思います。それは本当に日本独特で、アメリカ、ヨーロッパでもみんな吹き出しのなかの文字は手書きです。それはアルファベットですから、つまり漢字とかそういうものがありませんから、小さくても読みやすいんです。アメリカやヨーロッパのマンガの吹き出しの文字はかなり多いです。多いけれども、小さくなっているんだけれども、漢字みたいではないから読めるわけです。いつもこれは翻訳する人の悩みなんですが、僕もそういう経験がありますが、アメリカのマンガを例えば日本に訳す場合は、同じ大きさの関係で本を出したとしますと、吹き出しの大きさが足らないものですから、あれを翻訳するとき困るんです。正確にその言っているとおり全部省かないで訳そうとするとはみ出してしまう。日本語にすると量が多くなってしまうんでどうしてしもはみ出てしまう。それで、どうしても省略して訳さなければいけない。

昔、僕が80年代に翻訳しているときは、「Xメン」とか「スパイダーマン」を小さな新書判で訳していたんでうんと省略して訳す必要があったんです。今も「Xメン」であるとかそういうマンガは翻訳が昨今、90年代でも出ていますけど、その場合、日本でもそういうマンガに非常に詳しいオタクが育っているものですから、そんないいかげんな訳じゃ許されないんですね。それで、活字は小さくても細かく正確に訳していますよ。大変だと思いますが、欄外に注までつけて訳している。

 

 

 

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