牧野 ありがとうございます。
今、皆さんに、それぞれのお立場から、日本のアニメ・マンガは特異な存在なのか、そうではないのかというお話を伺ったわけですが、ニュアンスの違いはあれ、非常に特異な内容と発展形態をもってきたんだというお話を伺うことができたように思います。同時に、現象面でこういうことがあるということをそれぞれ証言していただいたのですが、韓国の事例は鮮明ですね。私の勤めている精華大学でも、韓国の留学生は非常に優秀でありまして、日本語を勉強するために2歳ぐらい年齢が高いということもありますが、意欲その他もろもろ非常に情熱も技術も注目すべきものがある。もしも韓国でこれからマンガ・ビックバンのようなことが起こるとしたら、彼らが中核を担うのではないかと、実は考えているのです。
そして、我々の高齢化。コミックもテレビ局もやや老齢化しているという厳しいご指摘があったわけですが、それとはまた別に、ベースになる部分で議論を進めたいと思うのです。第1回のときも読み取り、つまり映像の読み取りという基本的なところでお話が出ました。日下さんは、あのときほんのわずかな時間ではありましたけれども、日本の漢字にも言及されたように思います。今、皆さんのお話を一通りお聞きになって、マンガのもっている現象面でのさまざまな問題と、もう一つ、もっと本質的に日本のマンガが伸びてきたもう一つの原因として、読者の読み取り能力という重要部分があると思います。このあたりに関しまして、日下さんの普段の持論とお三方のご意見を伺ったあとでのご感想をお聞かせ願いたいと思います。
日下 先日、ポケモンをアメリカヘ輸出した際のエピソードを聞きました。ポケモンのストーリーの中に、死んだサトシがポケモンに囲まれて涙に包まれると生き返るというのがあるんですね。それをワーナー・ブラザーズの人が、話の最初のほうにモンスターの涙には死者を蘇らせる特別な能力があるんだと、説明的なものをちょっと入れといてくれないか。これではあまりに唐突で、アメリカの子供は何でサトシが生き返るのか解からない。と言ったそうです。