それが、テレビを始めるとなると、1年じゃないんです。1カ月に4本つくらなくてはならないわけです。そうすると、良心的なといいますか、今までやっていた東映の現場のアニメーターたちは、ディズニーカラーから否応なしに脱却しないと、とても月に4本つくれないわけです。それで、もう目をつぶって、粗製濫造という形でつくらざるを得ない。
そうするためには思い切った手法に転換する必要がある。ちょっと専門的な話になりますけれども、ディズニーは、フルアニメーションといいまして、1秒間に24コマフィルムが動きます。ディズニーはその24コマごとに、全部絵を描いているんですが、日本のテレビのアニメーションは動くとすれば3コマで1枚、ということは1秒間に8枚描けばいいわけです。カチャカチャとした動きになります。フルアニメーションをやっていた人たちが見ると、もう耐えがたい手抜き作業の連続だったわけです。テレビ班と劇場班があると、テレビ班はひどく劇場班にコンプレックスをもち、劇場作品の制作をしている人はテレビの連中を軽蔑しながら見ていたというふうな状況であります。
そのうちに、分業制度というのが破綻いたします。というのは、日本もバブル経済でものすごく労働力が足りなくなりますと、アニメで働いていていた団地のお母さんとか、そういう人たちが全部スーパーなどに労働力としてとられてしまったんです。制作費は上がらないし、単価も上がらない。どうするかというので、では、韓国にお願いしよう、台湾にお願いしよう、フィリピンにお願いしようというふうにきているのが、今の現状であります。
日本のアニメが元気だということで、最近、アニメーションしっかりしてくれよ、産業化してくれよというふうに言われますが、今まではサブカルチャー扱いされていましたから、何でもありで、いろんな規制とかそういうものなしに結構自由にやってきた世界でしたが、今は、海外へ行って見ますと、黒須さんのところは別なんでしょうが、暴力的な表現に対する批判とか、性表現に対する批判というのが非常にあります。