そうすると、まだそのころは日本のマンガがアメリカに入っていません。入っていないという意味は翻訳されてはいません。でも売ってはいるわけです。それで、あるマニアのグループがカリフォルニアにいて、それが日本から、日本の出版社と僕が紹介して直接交渉して新書判のマンガを買うわけです。もちろん翻訳されてない。それをアメリカのマニアにそのまま売ってある程度売れたわけです。せいぜい何十冊でしょうけれども。そういう人たちが興味をもち始めた。そうすると、言葉がわからなくてもいいのが絵ですから、絵のわかる人はそれなりにマンガがわかるわけです。アメリカの漫画家のなかで日本のマンガに注目する人が出てくるわけです。僕が1975年に会ったある漫画家は、アメリカで会ったんですが、その漫画家は「スパイダーマン」の絵なんか描いている人でした。でも、「子連れ狼」のマンガをこんなにもっているんです。絵がいいというわけです。もちろんその人は言葉はわからないんです。でも、同じ漫画家ですから絵がわかるわけです。「子連れ狼」がおもしろいというのでずっとアメリカの紀伊国屋で買っているわけです。
そういう人たちがあっちこっちから少しずつ出てくると、例えば、今アメリカで巨匠になっているんですが、フランク・ミラーという「バットマン」を改革した、バットマンを大人向きに描き直した漫画家がいますが、その人は「子連れ狼」のものすごいファンで、アメリカで「子連れ狼」が出版されて、アメリカ版が出たときにその表紙を描きました。自分でも長編マンガを描いています。それも非常に日本の時代劇に影響を受け、SFなんですが、何か虚無僧みたいなのが出てきたり、侍みたいなのが出てきたりして、「子連れ狼」の影響がとてもわかる。そういうような動きも70年代に出てきました。
そういうようなことから、日本のマンガというものの魅力というのは、画面が非常に大きくてダイナミックであるということが知られていって、ですから、今例えば洋書店にいって売っています。帝国ホテルの売店とかそういうところに「スーパーマン」「バットマン」を売っていますが、それを見ると、薄い雑誌ですが、絵が非常にコマが大きくなっています。