日本財団 図書館


今、日下さんがおっしゃったように、IT革命の中核にマンガ・アニメを据えようとか、対外政策のなかにマンガというものの有効性を生かそうとか、そういうような流れになるということは、長くマンガの現場にいた者としては非常な驚きであります。私どもが、何とか勉強の敵ではなくてもう少し正しい社会的認知をいただきたいと言っている範疇から、一挙に飛び越えて、とんでもない高みに押し上げられていかれそうな、そういう感覚を実はもっているわけです。

そうしたなかで、日本のマンガは非常に特異なものである。特異なものだからこれほど世界に認められてきたんだという見方をする方と、いや、そこまではいってない。それは思い過ごしでしょうと言う人と、二つの意見があります。立命館大学などで最近、漫画家や評論家以外の研究者たちが、マンガについて語りはじめたのをご存知かと思いますが、皆さんが、私はこういう研究をしているんだということを披瀝し始めたんですね。

私のお隣にいらっしゃいます小野さんは、もう早くから世界中のマンガを研究されております。それから、たんに制作物としてのマンガを読み取るだけではなくて、その作者とも幅広くお会いになり、マンガの本質的なことをよく研究されている方です。我々がともすると、日本のマンガ特異説を観念的に唱えてしまう傾向のあるなかで、小野さんは早くからもっと公平な立場でマンガをとらえているいうことを知っています。

まず、その小野さんに。特異でないとしたら何故日本のマンガが世界に通用するのか、特異だとしたらどこが特異なのかという、ご意見をまずお聞かせいただきたいと思います。これは立命館での研究会と違って、放談会でいいそうです。そういう気持ちでお話しくださいますように。

 

小野 それはマンガについて、つまりアニメではなくてマンガについて話したほうがいいわけですか。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION