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それでは、本日のパネラーの方々をご紹介させていただきます。

京都精華大学教授で漫画家でもいらっしゃって、本フォーラムの座長をお願いしています牧野圭一先生です。

マンガ評論家でご高名な小野耕世さんです。

東映アニメーションの山口康男さんです。

日本アニメーション黒須正雄さんです。

当財団の会長、日下公人です。

では、最初に日下会長から、本日第2回目に対するメッセージをお願いいたします。

 

日下 お暑いところをお集まりくださいまして本当にありがとうございます。

私、別にマンガが描けるわけでもありませんで、読者の一人にすぎませんが、こんなフォーラムを運営しよう、こんなことを考える必要がある、そんな気持ちをもっているだけでございます。どうしてそんなことを思うかといいますと、これは私の育ちなんですけれども、父と母は当時の日本としては最高の学歴をもっておりました。親戚はどうだったかといえば、いわば最低の学歴をもった人たちばっかりで、小学校もろくに卒業してない人たちのなかに二人だけいるという変な環境で育ちました。当時、周りの会話を聞いておりますと、父と母の会話のほうが空虚である。真実を掴んでいるのは、むしろ学歴のない親戚の人たちではないかと思っていました。それを表現する言葉は彼らなりにある。ただ、それは活字にはなりにくい。というようなことを子供心にずっと思っておりました。

私はその後、言語化された世界では何一つ不自由を感じたことがない。大学を卒業するまで言語を操ることに関しては友達に引け目はありませんでした。しかし、自分が真実を掴んだという気持ちもない。こういう世界にうまく付き合っているだけだと、本当に自分が見つけた真実を表現しようと思えばマンガのほうがよっぽどいい。というので、東大の五月祭でもマンガばかり描いて発表しておりました。先生の中には「結局はマンガだよな」と言う人もいて、文章なんか要らない、数学も要らない、統計も要らない、データも要らない、そういう世界があるということを学生の頃考えていました。

 

 

 

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