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あらゆる高度な表現技術を習得されたはずなのですが、結局そこから離れて、ご自分の完成に忠実に応えたことで成功されたのだ、ということをご紹介したかったのです。

12回のフォーラムで、マンガの読み取り方や、現象を追いかけていくことがIT革命の最中に重要な意味を持ち、日本の将来を救っていく、もしくは司会者が申したように、地球を救うというところまでこの東京財団フォーラムは結論をしているわけであります。こうした仮説はマンガ家としてちょっと面はゆい感じを受けるのです。しかし一方で、例えば二頭身半、大目玉のマンガキャラクターがなぜそれほどに状況を変えていったか。世界的なキャラクターであるミッキーマウス、あれも奇妙なものでネズミのお化けというかネズミと人間の坊やの合体のようなものなんですけれども、そういったものが生み出され、結果としてそのキャラクターが人気を持って受け入れられているのはなぜなのかということに関しては、まだまだ究明され尽くしていないのが現状です。

私も専門家ではありません。単なる1人のマンガ家にすぎないんですけれども、あるときテレビを見ていましたら世界最先端の脳研究が1時間番組で紹介されていました。その中に注目すべき一つの事例がありました。私たちの感覚に対応する脳の部位というものを映像化すると、マンガのキャラクターのようなものが表れるそうです。唇とか目玉とか手とか、非常に感覚神経が集中している部位に対応する脳の表面に脳地図が描ける。その脳地図をCGでかき起こすと、それはもうほとんど二頭身の、体が小さくて目がでかくて唇が大きいオバQのようなマンガのキャラクターが表れる。つまり、私たちの脳の中にはオバQのごとき図形が、感覚地図として描かれているというのです。

そうすると、このフォーラムでもマンガ家、マンガ評論家、編集者というような組み合わせだけではなくて、事務局にお願いして、脳科学の先端の研究者にも加わっていただいてお話しせねばならない。そういうことをしない限り、恐らくマンガというものの全体像はとらえられないのではないかというのが座長の感覚なんですが、日下さんはどんなふうにお考えでしょうか。

 

 

 

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