秋山さんは10センチ以上のものは書かない。マジックでぐにゅぐにゅと描いて、そのぐにゅぐにゅとかいたものを拡大して製品化しているわけですね。秋山さんの製作の秘密です。
さっき日下さんがおっしゃっていたように、大芸術をやろうとしたのではなくて、無意識に自分の思いのままにかいて、それが結果的に社会に受け入れられていくという状況について、秋山さんはどのように御自分で分析されていますか。
秋山 自分のことになると急に気が弱くなってしまいます。僕は、大学で美術のデッサンを教えていて、絵を描くということは何なんだろうということを学生たちと考え表現しているんです。
ところが何かやり始めてきたら美術史が非常におもしろくて、ルネサンス前後も含めバロックもロココも、印象派以前は西洋は写実を求めたんですね。いわば空の空気も、向こうに何かあるんだということでどんどん絵の具が厚くなっていって、それでそこに空ができてきた。しかし、印象派では、日本の浮世絵を見て、空を1色でばーんと色を塗ってこれは空だ。それを見たときに印象派の人たちはびっくりして、あら、すごいぞと。色はビビッドだしシャープだし、形は妙にデフォルメしてるし、何でこんなに美しいんだろうと思っていたわけなんです。
そのような自由な発想が欲しかった。小さく描いて現代のテクノロジーを活用して表現の自由を求めた。そんなことで、僕は10センチよりも大きい絵はかかないぞとあるときに誓ったんです。
牧野 秋山さんの大きなポスターをご覧になった時、彼の原画は非常に小さくてこれは拡大されたものだということを思い起こしていただきたいんですけれども、なぜここで話題に取り上げたかと申しますと、秋山さんは多摩美から芸大というまさに絵画教育のトップのところを走ってこられました。