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牧野 さっき申し上げましたけど、1コママンガの中の中心的スターが人魚で、そちらには男性の人魚が結構出るんです。孤島マンガというジャンルがありまして、定番の舞台なのですが…大海の中の孤島に男の人魚のいる。そこに女性の人魚が来て捕らわれるんです。その作品に付けられたセリフが、「おまえは私の女房になるか晩御飯のおかずになるか」というもの。空想の中でまた空想が拡大していくパターンですね。

土佐さんがいろいろやってみた結果人魚にたどり着いたということは、1コママンガの代表として非常におもしろいものを感じました。

秋山さんが、先ほど『アンパンマン』の例を出されましたが、アンパンマンが空を飛ぶというのをお描きになったのはやなせたかしさんで、懇意にさせていただいている先輩です。どちらかというと1コママンガの世界の作者、4コママンガの世界におられた方で、可愛いキャラクターに大ブレイクして世界に飛び出していってしまうということは、作者御自身も想定しなかったと言っています。あれを発表された会社はサンリオという会社ですが、スヌーピーの扱いで有名です。それで大きくなった企業ですけれども、やなせさんが傘下の出版物であるイチゴ絵本の中で『アンパンマン』を発表したときにサンリオの専門家集団が「先生、いいですけどアンパンが空を飛ぶというのはどうでしょうか」ということで、ほとんど受け入れられなかったんですね。つまり、ヒットするということを想定していなかったわけです。やなせさん自身は作品には大変な自信をお持ちでありまして、どんな子供でもまず初めに丸を書くということは、はっきり意識しておられました。さっき秋山さんがおっしゃったとおりなんですね。そもそもアンパンマンが先にあったのか、丸を描いていったらアンパンマンになっちゃったのか、その辺はまだお聞きしていませんが、いずれにしても、やなせさんの言葉で言えば、そのアンパンマンに関わる食パンマンだとかオムスビマンとかいろいろな派生的なキャラクター群が自分の手を離れてドンドンひとり歩きしているそうです。町でいろいろなグッズとかアンパンマンのデザインに出会っても、自分が作ったものというよりも、もともとそこにアンパンマンというキャラクターがいて勝手に動いているという感覚を持っている、やなせさんはそう実感しているとお話しされていました。

 

 

 

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