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インタラクティブ・アートがビデオや映像などと違う点は、やっぱりインタラクションしてどんどん世界観ができあがっていくので、リニアに時間軸を刻んでいけない面があるんですね。インタラクティブ・アートをやる場合はインタラクションの大体の骨格を最初に作るんです。絵画にしてみればデッサンみたいなところなんですが。大枠だけ作ってしまってちっちゃいところではどんどんちっちゃなインタラクションを作り込んでいくんですね。バイブレーションとか触ったら感触があるというのも後からついてきたことです。

それで、じゃあ触った感触があるんだったら人魚ロボットみたいなのをつくっちゃえばいいんじゃないという話に発展することもあると思うんですけれども、そうなると、すごく即物的になっちゃうと思うんですね。それによって非常に微妙な、優雅な動きがでなくなるのです。人間というのは、基本的に触れそうで触れないというか、そういうイリュージョンに興味を持つ、憧れると思うんです。そういうところを目指したほうが面白いというかアートになるんじゃないかと思いました。

ギリシャ神話のナルシスの物語もかなり意識しまして、その鏡の中に自分の分身がいて、自分がいろいろやるとインタラクションしてくれる。で、触れそうで触れない。触ると触覚があるんだけど、金魚すくいのようにすくおうとしてもすくえないわけなんですよね。そういったところに微妙な人間の優さとか、言葉にできない部分を表現できればいいかなと思っていました。

なぜ人魚にしたかという理由はいろいろありまして、最初から人魚になっていたわけではなく、いろいろな映像をつくっては水に映してたりしてたんですけれども、魚にしてから、魚ではやはり人間の分身として感情表現をするのに難しい面がありまして、やっぱり人間というのは人型に関心を持つじゃないですか。自分の分身的なものに感情移入すると思うんですね。それで、人型にしていたほうがそういう誘導が非常に易しいのではないか、窓口が広いのではないかということで人型にしました。海外で発表するときによく言われるんですが、基本的に人魚って女性の動きなんですね。男性の人魚は非常に珍しがられました。

 

 

 

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