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牧野 どんどんイメージが膨らんでいって、議論している皆さんの頭の中で飛躍するところがまたおもしろいのですね。土佐さんの作品についてもう一つ、これはポイントになろうかと思うのですが、作品の中に赤ちゃんが出てきましたが、赤ちゃんの目が巨大ですよね。テニスボールぐらいの目玉が2つあって、それが眠ったり怒ったりしていました。これがやはり普通の赤ちゃんの目ではなくて、ほとんど頭蓋骨から飛び出してしまうかのごとく巨大な目がついているという、そういうデザインになったという理由は何でしょうか。

 

土佐 やっぱり見るところが違いますね。なかなかでない質問です。基本的には目を大きく描くと可愛らしく見えますね。いろんなものに好奇心があって、興味があって、前向きでと、そういう感じを出すことにも効果があると思ってあのようにしました。

あのキャラクターに関して言えば、あれも分身なんですけれども、私の今までやってきたことというのは、感情だとか無意識情報だとか潜在意識だとか、そういった人間の主観的情報をどうやってコンピュータに載せて表現するかということなんです。分析してコンピュータに載せるということは、先に分析をしてモデルをつくって、その次に表現になるんです。いわゆる従来のアートもそういう過程なんじゃないかと思うんですが、分析をしている場所が作家の頭の中でではないかと思います。その作業をコンピュータの上に載っけてシミュレーションしてみて、モデルがきちんとできたら、次に表現に移るわけです。キャラクターってやっぱりとても大事なんですね。あれが赤ちゃんじゃなかったら、あれほど人に受け入れられなかったと思います。しかも、きょう皆さんには残念ながらビデオでしかお見せしてないんですが、インタラクティブ・アートなので、その場でそのものがリアクションして返してくるわけですから、やっぱり赤ちゃんだと許せることって結構あるんですね。キャラクターによっては一部の人にしか受けないようなこともあったでしょうが、赤ちゃんにしたことで世界中で受け入れられたと思いますし、ちょっとコミュニケーションに違和感があっても赤ちゃんだから許せるという、人間本来のコミュニケーションの力が出ているんじゃないかと思います。

 

 

 

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