先ほど控室で、日下さんにも口頭でこういうものですよと申しあげたのですが、実際にご覧になってどのような感想をお持ちになりましたか。近づきたくないとおっしゃっていましたが実際いかがでしたでしょうか。
日下 いや、感心しました。コンピュータ・グラフィックスというべきかわかりませんが、どんどん進歩するものだなと思いました。ただ、以前から無意識に人間がやってきたことをコンピュータであらためて見せてくれたという感じもしました。
いろいろなことを想起しましたが、例えば私は自分の家から駅まで歩いていく間に出会う猫を9割手なづけます。その時に大事なのはしゃべり方なんですね。まず自分の前頭葉と知性を結ぶ線を切っちゃうんです。そうした状態で話しかけると猫もわかるらしいのです。もちろんそれでもだめな猫はいますけど、コミュニケーションができるようになります。ボディランゲージというお話がありましたけれども、声のイントネーションにいろいろなことが含まれていて、それを猫は理解するようです。
人間だって、相手の人の真意を理解するためにイントネーションに頼っているわけですよね。自分は好かれているのか好かれていないのか、声の調子で大体わかります。だけど、話されている論理をキャッチするよう教育を受けてしまったんですね。そこに問題があったのではないかと思います。一番わかりやすい例が、男女が今の人魚みたいにひっついたり離れたりしているような状態の時です。相手が自分のことをどう思っているか真剣に考える時に、口からでた言葉よりも、むしろボディランゲージやイントネーションに相手の真意を見出そうとするのです。
こういう非言語分野について今までアカデミックな世界あるいはサイエンスの世界では無視してきました。あるいは、ユダヤ的契約の社会では言葉のみを信ずるわけです。でも、そんなことでは人間は生きていけないことを科学も気がつくようになり、例えばボディランゲージですと今から30年ぐらい前ですかね、その地位を与えられるようになったのです。