聴衆 嘘発見器とかにも使えるかもしれませんね。
土佐 それに近いと思いますが、私の場合のコンセプトは嘘を発見することではなく、近々コンピュータとのコミュニケーションが今以上に多くなると思われる状況の中で、どうやったら無味乾燥なコミュニケーションではなく情緒が含まれた形でコンピュータとコミュニケーションができるかということを考えております。
牧野 皆さんがどのようにご覧になったか興味が深いところでありますが、私は初めて拝見した時、非常に強烈な印象を受けました。と申しますのは、遠い将来はこういうものができるだろうということは想定しておりましたし、マンガの作品の中でもそれに近いことはどんどん描かれたりしているのですが、土佐さんはいわゆるマンガ家でもアニメーターでもないんです。研究者もしくはアーティストでいらっしゃる土佐さんからこういった作品が生まれてきてしまうという現実がここにあるのです。
使われている声はすべて合成音声だと思ってよろしいわけですね。
土佐 はい。
牧野 研究都市というさまざまな研究所が集まっている場所で、それぞれの研究を結合してこれまでマンガの作品の中だけであったような世界がどんどんと生まれているわけです。マンガの定義、アニメーションの定義というようなことを我々が一生懸命やっている間に、どこにも入りそうもないような世界が進行していくというような状況があることを強く認識する必要があるように思います。
このフォーラムがこれから約12回開催されますが、骨組みはあってもどんな肉づけがされるか今のところわかりません。恐らくこの土佐さんの御研究の作品というものは、その12回を通しても非常に象徴的な位置づけになるのではないでしょうか。たびたびパネラーの方々がそれを思い起こして議論の対象にするのではないかというふうに感じたわけです。