日本財団 図書館


ところがマンガも混沌としていて、そのマンガの良さをマンガ家たちが理解していないのに僕はまた更に驚いて、これは表現する人たちが自分たちを卑下しているよう側面もあるし、逆に己惚れているようでもあるしで、良いところをちっとも見ていないなというのが、僕の現代のマンガに対する見解です。ところが周りが騒ぐと、マンガの世界で「俺がやってることはすごいんだ」と急に有頂天になる、この軽薄な感じが、これこそマンガだなと思ってしまって、マンガって何て面白いんだろうと思ったんです。そんなことで、今、ちょっと長く話をさせてもらいましたが、マンガとの出会いの話をさせていただきました。

 

牧野 ありがとうございます。日下さんがたいへん明確に方針を打ち出されたために、内容も直截になって初めから本音が飛び出している感じですが、私の場合は、現在日本漫画協会の理事でもありますし、一応現役のマンガ家のつもりでおりますので、マンガ家自身がマンガもしくはマンガ家を批判するということは複雑な気持ちで聞かせていただきました。秋山さんも同様にマンガ家協会の会員でありますので、一緒に自己批判をしながらマンガというものを見つめていきたいと思います。さて、外国で日本のマンガといったときに、日本のテレビ・アニメーションを思い浮かべる方も相当いるという話を聞いたことがあります。これが正確かどうかということは、これから12回の議論の中で浮き彫りにされればいい話ですが、実は今日の会場にお越しの方の中に日本アニメーション協会の小出事務局長がいらっしゃいます。

先日、恵比寿の写真美術館で第2回目の日本アニメーション学会が行われたわけですが、その時に小出事務局長御自身が、やはりアニメーションの範疇についてお話をされました。これは、マンガ学会もアニメーション学会も学会とはいえまだ非常に若い学会であることを示す好例だと思います。今、10の大学にマンガ学科がなければいけない、それくらいでないとマンガという巨大なモンスターを捉えることができないのではないかと、そういうお話が秋山さんから出ました。アニメーションという切り口で学会で話をされるときも、ではアニメーションというものもどこからどこまでをアニメーションと定義するか。そこからスタートしなきゃいけないのが現状ですね。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION