日本財団 図書館


ところが、私が芸大を受験したころにはデザインではなく「図案」と呼ばれ、いわゆるファインアートの分野と比べて対等には認められていないような状況がありました。そういうデザインがまだ十分に認知されなかったような社会状況の中でデザインを立ち上げ、そのデザインの中にマンガ的要素を取り入れてこられた方が秋山さんだという御紹介をしたうえで、そういう御経験と、現在、多摩美術大学でグラフィックデザインの学生さんに接しておられる、その視点から本日のフォーラムにコメントしていただきたいと思います。それではよろしくお願いいたします。

 

秋山 秋山です。よろしくお願いいたします。

今ほど牧野さんから説明があったとおりなんですけれども、デザインとは何だということを考えると、「図案」から「デザイン」に変わったものの、デザインという言葉が示す概念があまりにも広いんですね。人間、人体の科学すべてがデザインされていて、どのデザインを選んできた動物が生き残ってきたのかというような言い方がされています。ロケットもデザインされて宇宙に飛んでいくわけですから。そのデザインには美的感覚も入っているし、科学的なものもあるし、そこには人間の英知が全部含まれているんだと。それでも、まだまだ人間の力はほとんど及ばなくて非力だといわれている感じがするんですけれども。「デザイン」という言葉が日常になったということが言いたかったんです。

それから、先ほど日下さんがマンガが馬鹿にされているという言い方をされてましたが、実は僕も初めはマンガというのはこういうものかなと先入観を持って見てきました。例えばマンガばかり見てると、親から「あなた何をしてるの。勉強しなさい」とかって言われて育ってきたんですけれども。でもだんだん勉強をしてきたら、これはいけるぞと。マンガのおもしろさ、シンプルな表現は、他のビジュアル・アーツ(視覚芸術)の中では最もコミュニケーションしやすいツールだなと思って、これは芸大の大学院に行く前でしたけれども、これを僕のテーマにしようというふうに思ったんです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION