私は、座長という重責を担っていますが、現場の空気、つまり学生たちと触れ合ってそこで得たものを縦糸にしまして、そこに各界の専門家の方々、最新の研究成果というものを横糸に折り込んで、これから11回の国内フォーラムと最後の国際フォーラムとを併せて12回具体的提案を織り込みつつ、議論を進めたいと願っています。
このフォーラムの特色として、非常に明快な成果物の予想が最初に立てられているという点があります。もちろんそこに無理やりに持ち込んでしまうというのではなく、そういう明確な骨組みのところに筋肉、神経系、循環器系をくっつけて一つの温もりのある人体をつくり上げるような感覚で、フォーラムを仕上げていきたいというのが座長として冒頭に申しあげることであります。
本日の予定時間であります2時間半というのは、聞く側にとっては非常に長い時間でありますけれども、話をするほうにとっては限られた時間でありますので有効に使っていきたいと思います。
私の隣にいる秋山孝さんは、多摩美術大学でグラフィックデザインを教えておられます。皆さん、もう既にいろいろなところで秋山さんのイラストレーションをご覧になっていると思います。ポスターとか雑誌の表紙とか非常に大量の仕事をなさっていらっしゃって露出度も高いという方なんですけれども、国際的にも非常に幅広い活躍をされています。彼の特徴は、単なるデザインではなくて、その中にマンガ的なアイデア、ユーモア、感性をふんだんに盛り込んでいるところです。秋山さん自身日本漫画家協会の会員でもあります。
それから、お師匠さんと言っていいかどうかわかりませんが、福田繁雄さんという高名なデザイナーがいらっしゃいまして、デザイン的な構成の中にマンガのアイデア、エッセンスを取り込んだ方ですけれども、秋山さんは更にその中に人間味というんでしょうか、非常にやわらかな部分も折り込んで、マンガとデザインをドッキングさせている方であります。
さて、マンガがずっと蔑視され続けてきた、疎外されてきたというお話も出ましたけれども、デザインにもそのような時期がありました。今や美術学校の中にデザイン科があるということは当たり前で、無いほうが不思議だという状況なんですね。