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理事長メッセージ

 

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新しい時代の「知的発信」をめざして

新世紀を拓く「知」の発信者として、東京財団は世界につながる都市東京から、新しい時代の「知的発信」をめざします。20世紀後半の日本社会は、「習熟」を徹底することで経済の発展を遂げてきました。習熟は、もちろん確実な成果を生むひとつの方法ではありますが、これからの時代にはむしろ習熟を超えた新しい論理力、経済で言えば新たなビジネスモデルの構築のように、現状を突破する大胆な一歩こそが求められていると言えます。こうした新しい「知」が渇望される時代に、東京財団はつねに価値ある知的発信を行える存在でありたいと考えています。この認識のもと、2000年、東京財団はその体制を、あらためて3つの事業部として整え、活動を強化しています。かねてから日本社会における政策研究の推進を行ってきた研究事業部をより一層充実させ、奨学事業部もその活動を新しい局面に移しました。また情報交流部も本格的な活動を開始したことなど、3つの事業部がそれぞれの独自性を発揮しながら知的発信を行う体制が整ったことは、2000年を特徴づけるトピックと言えるでしょう。

研究事業部では日本で最初の独立型政策シンクタンクとして行ってきた幅広い政策研究の成果をまとめ、日本評論社との共同による「政策研究シリーズ」の刊行を開始しました。政策決定は、本来、充分な政策情報を与えられた市民(ウェル・インフォームド・パブリック)が、民主的な手続きを経て行うものです。しかし成熟した市民社会における複雑な政策問題を、開かれたプロセスで解決してゆくためには、その基盤となる多様な政策研究の蓄積が欠かせません。東京財団では、このシリーズが多くの人々の目に触れ、同時に活発な政策論争の契機となることを期待しています。

また、広く政策論議を喚起するために、映像メディアの活用にも取り組んでいます。政策研究の第一線で活動している専門家に、分析的かつ建設的な議論を展開していただく場として『政策ビジョン21』というタイトルのテレビ番組を独自に制作し、1999年10月から「日経CNBC」と「国会TV」(CS放送、CATV)にて放送を開始しました。ここでは、さまざまな分野の政策課題について、研究成果に基づいた具体的な政策提言を紹介しています。今後もさまざまな方向性を模索する一方で、これらの活動のエンパワーメントを図るということが当面の課題となるでしょう。

奨学事業部の活動そのものも、やはり新しい段階に入りました。戦略的スクラップ・アンド・ビルドをキーワードに、プログラムの再編成作業を開始しました。基幹事業であるヤングリーダー奨学基金(SYLFF)では、これまでのネットワーク拡大路線から深化路線への転換を図っています。13年間に世界40カ国61高等教育機関に基金が設置され、輩出された奨学生総数は7,500名を超えています。これまでにもさまざまなフォローアップ・プログラムを通じて奨学生の交流や参加校の協力関係を培ってきましたがこのネットワーク活動をさらに深化させるための新たな仕組み作りを考えています。これは、13年間に200名に上る奨学生を輩出している世界海事大学(WMU)奨学金事業においても同様です。また、いずれの事業においても、発信地日本がネットワークに参加していないという課題がありましたが今年度初めて日本の慶應大学にSYLFFが設置され、世界的ネットワークの環がつながりました。WMUについても、日本の海事専門家を奨学生として派遣することを検討中です。奨学事業部ではこのように、多元化する価値観と多様化するニーズに応えられる柔軟な思考力と、地球の持つ可能性と限界を見すえ、グローバルな視点を備えた人材の育成をめざし、新しい時代にふさわしいプログラムの充実に向けて事業を展開しています。

情報交流部では、テレビ番組やポータルサイトなどのコンテンツ制作や、討論会やサロンなど情報生産の場を提供し、それらを出版物、パッケージ、電波、インターネットなど、さまざまなメディアを駆使して発信することにより、国際的に日本を理解してもらう仕組みづくりを進めています。21世紀の世界が繁栄し共存するために、我々がなすべきことは、新社会を創造していく新たなアイデアを創出することにほかなりません。さらにその成果を積極的に対外的に発信し、日本の国際的知的貢献を示すことが最も重要と言えるでしょう。それは21世紀のリーダー達を育て、支援することにもつながっていくはずです。情報交流部はこうした認識から、世界に向け、人々に歓迎され役立つ情報を生産し、発信します。同時に東京財団そのものの存在意義のアピールにも意欲的に取り組んでいきます。

東京財団は発足以来の3年間で、すでに実績のある奨学事業を発展させながら、政策研究事業を推進し、情報交流事業を軌道に乗せることに邁進してきました。そして、いよいよ助走の段階を終え、次のステップヘと移行しつつあります。東京財団が、真に世界に貢献できる知的発信拠点になるためには、まさにこの第2段階が重要と考え、さらなる発展を遂げるべく、今後も努力を続けていきたいと考えています。

 

理事長

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