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○モデレーター ありがとうございます。どなたか、今の質問に対して、コメントしていただけますか。

 

○ゼウフナー 今から15年前、私は、アメリカでの調査をやりました。アメリカの友人と一緒に、連邦政府のために、ホームレスとエイズの予防策のための対応をしましたけれども、そのときは、社会の最貧困の人たちと取り組まねばなりませんでした。ヨーロッパ人として一番驚いたのは、黒人だろうと、アジア系であろうと、また、先住民系、カリブ海系の人であろうとも、誰もが、自分たちは自由なアメリカの市民であることを誇りとしていると私にいいました。これはヨーロッパなどではみられないイデオロギーです。アメリカンドリームがまだ生き続けているなということの一部ではないでしょうか。アメリカが、集団としての精神そのものが破綻を来していたとしても、それがまだ残っているのではないか。まだ答えではないのはわかっていますけれども、おっしゃっていた価値の階層ということについての一歩かと思います。

マイケル・ワルツァーは、『スフィアーズ・オブ・ジャスティス』という本の中で、どういうところで私たちが、普遍的に、もしくは一部が普遍的に共有する領域なのかということについて考えていかなければならないだろうと指摘しました。多様なアメリカの社会の中においては、膨大なまでの多様性があり、その中においては、正義ということについて考えていきますと、人が互いに対話すること自体も不可能なところもある。けれども、中核となっているのはフリー・アメリカン・シチズンである。自由に生まれ、生きている、そういったアメリカの市民、そして民主主義、寛容、環境に対する責任をもつ、そしてまた自己についての意識、そういうことについての意識は中核としてあるのではないかということをボルツァーが『スフィアーズ・オブ・ジャスティス』の中で挙げています。これをさらに拡大させていきますと、スフィアーズ・オブ・バリューズということで、価値の方の領域という形へと転化させていくこともできようかと思います。そういうことによりまして、共有されている価値、システムとして、国境を超えたものとして考えられるかと思います。

ご質問、私も非常に気に入りました。また、おっしゃることについても、私も共感するところがあります。アメリカで何が起きているのかとか、ほかの国で何が起きているのかを分析すべきではないと思います。というのは、なかなか難しいことだから。ただ、一方で、先ほど質問者がおっしゃったことが、どのようにして私たちにも直接かかわるのかを考えていきますと、グローバリゼーションとローカリゼーションをみていくとき、幾つかの変数と、そしてまた無限なまでの組み合わせがあります。お互いに結びついている、そういうことについて考えていきますと、いかに一般的な、そしてまた共通性を私たちが確立させていくべきだと考えたとしても、基本的には、倫理についての共通の倫理、共通の認識をそれに対してもっていくということについてのご指摘だと思いますけれども、こういったことは簡単には定義づけられない。けれども、それについて話すことはやるべきです。すべての国がやるべきです。

 

 

 

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